プラダー・ウィリー症候群(PWS)児・者 親の会

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総合上飯田第一病院 小児科部長  上條 隆司

私とPWS児との出会い -GH治療の可能性-


ホームページの立ち上げというのは、大変な労力を要するということを聞いていますが、今回の竹の子の会公式HP開設おめでとうございます。


私とPWS児のめぐり会いについて、簡単にご紹介させていただきます。

昭和57年(1982年)、名古屋大学小児科より地方の市民病院(現在建設中の中部国際空港の近く)に赴任しました。
ここの小児科はそれほど規模が大きくないのですが、2人のPWS女児が外来に通っていました。私も知識としては持っていましたが、実際のPWS患者さんと接したのはこれが初めてでした。
2人とも人懐こく、憎めない面もある反面、こだわり・頑固といった独特の性格を持っていることを知りました。
このうちの1人美奈子さん(美奈ちゃん)は市内の主要な機関の電話番号を暗記していて、入院中、病院から電話をかけまくるという事件を起こしました。
この件から、この子たちは普通の子どもさんにはない、特別な能力を持っているのだということを実感しました。

私は小児内分泌を専門にしていたので、この2人の肥満・低身長について診させてもらうこととなりました。美奈ちゃんは後に糖尿病を発症し、私が国立名古屋病院そして現在の病院へ移ってからも、治療に通ってもらっていました。
10代の前半から15年以上にわたって、美奈ちゃんとお母さんとお付き合いさせてもらいましたが、 4年ほど前、糖尿病が悪化して名古屋まで通うのも大変となり、現在はやはり地元の市民病院の内分泌科で治療を続けています。

私ども小児科では、小児に関わる医療の情報を病院から市民の皆様に発信しようと、平成11年から年1回名古屋で「小児健康フォーラム」を開催しています。
小児の成長を主なテーマとし、アレルギーや心の問題などを取り上げています。
長年PWSの患者さんを診てきたものの、竹の子の会についてあまりよく知らなかった私に、会の存在を教えてくれたのは、このフォーラムに参加された西東海支部の支部長さんでした。
そのご縁からか、昨年の支部総会で、私の専門である小児内分泌のうち、成長ホルモン(GH)治療についてお話させていただきました。

皆様ご存知のように、PWS児へのGH治療が保険適用となり、私どもでは現在6名(男児2名、女児4名)に治療させてもらっています。欧米の文献などでGH治療の効果を知る機会はありましたが、実際にGHの効果は私の予想を上回るものでした。
6名全員が身長の伸びが良好で、治療1年目の年間身長増加が約8-10cmという結果でした。(治療前は年間5cm程度)。また、筋力の増強も期待以上で、それまで不安定な歩き方だったPWS女児が2-3ヶ月のGH治療でしっかりと歩けるようになりました。このような良好な効果が得られていますので、副作用に注意しながらさらにGH治療を進めたいと考えています。

PWS児には、多彩な症状がみられ、生活の質の向上のために小児科の中でも神経や遺伝、そして内分泌の専門家と関わる必要があると思われます。思春期・成人期には、産婦人科、内科、精神科のアドバイスを要することも多いかと思います。

ご家族や学校を含め、社会全体がかかわることで、PWSの皆さんがより質の高い人生を過ごせるようになるはずです。私も微力ながら、小児内分泌科医としてお手伝いさせていただきたいと思います。

このホームページを通して、孤立しがちなPWS児やご家族が有用な情報を得て、前向きな生活を送れることを期待しています。

2004.7.2

カテゴリー:[HP開設に寄せて] Date:07/02/11/Sun